本高度海外研究では、タイのチェンマイにおける教育機関への訪問、ラオスの教育スポーツ省において行われた教育行財政の研修教材に関するワークショップへの参加を通じて博士論文の研究の発展を目的としていました。チェンマイでは、チェンマイ大学のAnnopPongwa学部長やPhetchareeRupavijetra准教授の協力の下、現地の教育委員会や中学校、高等学校、そして教員養成大学への訪問を通じて、教育行政の仕組みについて学ぶ機会を頂きました。ラオスでは、小川啓一教授が総括をされている文科省の平成25年度政府開発援助ユネスコ活動補助事業「教育行財政のガイドブック作成-インドシナ諸国の基礎教育に焦点を当て-」の一環であるワークショップに参加しました。同ワークショップの目的は、ユネスコの教育専門家とインドシナ3カ国の教育省計画省局長と共同で作成した研修ガイドブックについて、実践的な活用を視野に入れながら3か国へのニーズへの適合性などを検討することでした。

私の研究テーマは、「ケニアの初等教育における学力と家庭環境の関連性について」というものであり、今回のASEAN地域での教育行政や学習支援体制の実態を垣間見たことはとても貴重な経験となりました。一見すると、アフリカのケニアとASEAN地域の国国では文化や経済水準が異なり、学校での教育活動で起こる問題などに大きな相違があるように感じられます。ところが、タイ北部のチェンマイでも少数民族の統合に関する課題があり、また同じ課題はベトナムの基礎教育についても言えることがわかりました。また、カンボジアやラオスにおいて起こっている適切な教員配置の問題もまた、ケニアやその他のアフリカ諸国にて起こっている教員の常習的欠勤とも関連する課題であることも見えてきました。厳密な意味で、ケニアとインドシナ諸国との教育の比較というのは難しい点が多々ありますが、それでもいくつかの共通の課題が実態として見えたこと、そしてその背景にある教育の課題には、一部の集団による学力不足が暗示され、その背景には子ども達の家庭環境の要因が作用している可能性が見えてきたことからも、本高度海外研究は非常に有益であったと感じています。

また、ラオスでのワークショップにおいて研修ガイドブックの内容や今後の活動の方向性を話し合う場に、参加させていただき自身の研究の内容に対するインスピレーションを頂いただけでなく、研究活動の意義や研究成果のアウトリーチ活動の重要性を再確認させていただくことができました。教育開発や地域研究は、学際的側面が強く研究の意義というのは純粋なアカデミックな領域での貢献と共に実際の現場で起きている課題解決のために、いかに貢献しうるかということはとても重要になります。研究の為の研究、というよりも理論と実践の融合をはかることで、研究と政策面での改善が相補的な関係になることが一つの理想的な在り方であると考えます。同ワークショップでは、神戸大学のチームが教育経済学や教育行政学の理論的な分析のツールを提供し、各国の教育省や国際機関の教育専門家が、それぞれが直面している課題の解決にそのツールをどのように応用可能であるかということを考え、研修ガイドブックの修正に尽力していただきました。まさに、研究活動と政策改善活動の融合が行われ、「子ども達のより良い学び」のために私たちの交流活動が位置付けられたと感じます。


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