2016年11月9日(水)、神戸大学大学院国際協力研究科棟1階大会議室にて、日本学術振興会研究拠点形成事業(アジア・アフリカ学術基盤形成型)第9回セミナーが「開発途上国における教育財政と公共政策」をテーマに開催され、本研究科内外から数多くの若手研究者が参加しました。

本セミナーでは、ベトナム教育訓練省計画財務局次長のLe Khanh Tuan博士が「ベトナムにおける教育の国家会計制度の成果」をテーマに、ベトナム政府が教育財政において直面している課題について共有されました。ベトナムでは教育財政の分権化が地方自治推進に貢献しているのに対し、教育財政の運営面で中央政府に多くの課題をもたらしています。また、ベトナムでは政府支出に占める教育支出の割合は上昇していますが、現時点での支出は未だ十分ではありません。その一方で、国家の財政予算にかかる負担と家計・地域の財政貢献が膨らんできているのも現状です。Tuan博士は更に、教育の公的支出における効果的かつ統一された報告システムの必要性についても論じられました。

続いて、ベトナム国家大学経済開発研究センター長のPham Vu Thang博士が、「ベトナムの初等教育における教育財政-学校レベルの視点から-」をテーマに発表されました。ベトナムでは国内総生産の6%を教育に投資していますが、未だ向上の余地が多くあります。国が財政の分権化を進めても、それぞれの省が公的予算を学校に分配する方法が異なるため、結果として地域格差を招いてしまっています。Thang博士は終日学校(Full Day Schools:FDS)と半日学校(Half Day Schools:HDS)についても論じられ、それぞれの学校が政府から受け取る財政支援の差異と、FDSにより多くの財政資源を持ち込むための政府の取り組みが欠如している問題について指摘されました。

ソウル国立大学のKi-Seok Lee博士と本研究科の小川啓一教授は、本プロジェクトで行っている「スリランカにおける幼児教育・保育財政」についての共同研究の成果を共有されました。スリランカでは、初等教育の修了率に関する目標がほぼ達成されたにも関わらず、教育のジェンダー不平等が未だ根強く残っています。スリランカでは世界銀行が幼児教育・保育への投資に5千百万ドルもの譲許的融資を行いましたが、他のアジア・アフリカ途上国と比較しても幼児教育・保育への政府支出額が非常に低い点が指摘されました。このほかにも、幼児教育・保育に関わるステークホルダー間の連携が弱いことや、標準化カリキュラム、教員の訓練や教員免許を持つ教師の不足などが他の課題として挙げられました。

本発表の後には、3名の若手研究者が討論者として、質問やコメントを述べられました。討論者は、京都大学大学院教育研究科の研究員(JSPS特別研究員)の島田健太郎博士、神戸大学大学院国際協力研究科の研究生で、バングラデシュ・ダッカ大学の助教授でもあるMd. Jahangir Alam氏、そしてベトナム国家大学講師で、本研究科の博士課程後期課程に在籍しているHuyen T.T. Nguyen氏でした。更に、セミナーに参加した多くの若手研究者からもコメントや質問が積極的に出され、とても有意義なセミナーとなりました。

(文責:Najung Kim, Doctoral Student; 翻訳者: 博士課程前期課程1年 西原梨緒

関連リンク
http://www.kobe-u.ac.jp/en/NEWS/event/2016_11_09_01.html


Category: 拠点形成事業セミナー