目標
<研究協力体制の構築>
本事業で対象とする開発途上国におけるへき地の児童や労働児童、女児、少数民族/言語、貧困層の子どもたち等の「周縁化された児童」については、「如何に彼らを取り巻く困難な状況を打破し、就学させるか」という教育のアクセス向上に資する研究がこれまで多数を占めていた。既存研究の蓄積を踏まえ、本事業では、「周縁化された児童」の教育の質とその教育の中身を中核に据える。限られたリソースを活用し、効果的かつ効率的に彼らの教育の質を高めるための教育行財政政策モデル構築に寄与する実証的な研究を推進していきたい。本研究課題は、2015 年以降も継続的に実施されるべき課題であり、研究者の育成を日本とアジア・アフリカ地域において同時並行的に実施出来ることにより、持続発展性の高い研究体制の構築が可能になると考えられる。

<学術的観点>
現在、開発途上国における教育開発分野において最重要課題である「ポスト2015」に向けた重要な政策提言が導出出来ると考えられる。特に期待される効果としては、正確に把捉されていないアジア・アフリカ諸国における不均衡な教育実態を正確に把握することに寄与し、効果的な政策立案に貢献することが挙げられる。そして、現地のニーズや状況に適合し、公平性が高く、かつ持続発展性のある教育行財政のモデルを提示することも可能になる。2015 年に向けて量的拡大に傾注してきた本分野における関連機関に対して、新たな視点を提供するとともに、効果的な政策提言に資する情報提供を実施することが期待される。

<若手研究者育成>
対象国、機関所属の研究者を中心メンバーとする国際的かつ学際的な研究チームによる国際共同研究を実施する。若手研究者の育成・研究能力の向上:上記国際共同研究の実施において、神戸大学および参加大学・機関の若手研究者の積極的な参加を促し、若手研究者の育成・研究能力の向上を図る。 海外の参加大学や国際機関、教育省にインターンシップ参加生として派遣し、途上国の現状を深く理解した研究者を育成することを目標とする。

<その他(社会貢献や独自の目的等)>
基本的な本事業の目的は、研究成果を対象国の教育政策に反映させることであり、当該プロセスの中で若手研究者の育成を志向している。事業の推進方法は、対象国の研究者と日本の研究者が共同研究を行い、研究成果を協力機関である教育省や国際機関に共有することにより、政策提言に繋げる。
また、本神戸大学大学院国際協力研究科が、平成21年度より実施している国際協力機構の課題別研修「教育の行財政-教育の質、格差、内部効率性に焦点を当て-」の教科書としても本研究成果を活用する。当該研修においては、本事業の対象国を含む20ヶ国の教育省役人を対象に英語と仏語で年に2回、6週間の研修を行っている。更に、本事業の共同研究者を研修の講師として招聘することで、より一層、持続可能性の高い社会貢献(国際貢献)が可能となる。本事業に参画する若手研究者も当該研修の講師として経験を積ませ、グローバルに活躍できる教育開発の専門家育に育成することも本事業の目的である。

共同研究計画
研究課題名:
教育行財政の比較研究

日本側代表者:
小川啓一 神戸大学 教授

相手国側代表者:

Dr. Tin Tun (Professor, Yangon Institute of Education)
Dr. Phetcharee Pupavijetra (Associate Professor, Chiang Mai University)
Dr. Pham Vu Thang (Director, Vietnam National University)
Dr. Phouphet Kyophilavong (Associate Professor, National University of Laos)
Dr. Hamoud Al-Seyani (Senior Researcher, Education Research Development Center)
Dr. Ahmed Ghoneim (Professor, Cairo University)
Dr. James Wokadala (Lecturer, Makerere University)
Dr. Joseph Chimombo (Associate Professor, University of Malawi)
Dr. Ki-Seok Kim (Emeritus Professor, Seoul National University)
Dr. Yijia Jing (Professor, Fudan University)

研究交流活動計画:

平成26年度は、これまで神戸大学を中核にマラウイ大学、ウガンダ教育スポーツ省、ラオス国立大学と行ってきた基礎教育分野における教育行財政研究を他の対象国であるミャンマー、タイ、ベトナム、イエメン、韓国でも開始する。まず始めに、比較分析ができるように教育行財政分析のフレームワークを作成して、各国で調査、資料収集を行う。本研究の分析が終わり、原稿を作成した国(チーム)を対象に、神戸でセミナーを開催して、他のチームに共有する。

研究交流活動から得られることが期待される成果:
今年度は、「2015 年」という国際教育協力分野における重要年度を目前にして、学術的にも実践的にも必要性が高い研究である。また、これまで研究対象とすることが困難であったミャンマーなど、研究蓄積が僅少な国を事例とすることにより、学術界へ貢献することができる。
我が国の開発途上国に対する国際教育協力、教育開発研究の視座は、マクロレベルにおける財政支援中心の欧米の援助機関とは一線を画してきた。このような背景からも本課題は、日本の研究機関が中心となり、実践しなければならない教育課題である。また、これまでの日本の経験からも、天然資源に恵まれない環境で如何に人的資本に投資し、有能な人材を蓄積することの重要性が確認されている。本事業においても、途上国の研究支援を財政面から実施するのではなく、相互に連携、研鑽していく中で、日本側の若手研究者の育成、開発途上国側のキャパシティ・ディベロップメントを図りながら、わが国ならびにアジア・アフリカ地域での教育分野における人的資源の総合的な拡充を目指す計画である。

セミナーの計画
2014年5月2日「開発途上国における教育政策の展望ー国際教育協力の視点から」

≪セミナー開催の目的≫
本セミナーの目的は、教育経済や教育行財政の専門家である世界銀行本部のHarry Patrinos博士とソウル国立大学のKi-Seok Kim名誉教授とKi-Seok Lee研究員、ウガンダ・マケレレ大学のJames Wokadala博士を招聘し、開発途上国における教育政策や教育協力を教育行財政の視点から議論することを大きな目的とする。本セミナーは2部構成として、第1部では、教育政策のベンチマーキングについて議論する。第2部では、開発途上国支援のための教育協力について、2015年に韓国のインチョンで開催される国際会議以降の支援のあり方についての議論を主に教育行財政の視点から行う。セミナー対象者は、本学の若手研究者(院生含む)を初め、関係研究者とし、広く当該課題について議論を深める機会とする。また、本学の若手研究者(院生含む)には、国際的に著名な研究者、実践者とセミナー終了後にもネットワーク構築の機会を設け、将来的な研究推進に寄与する計画である。

2014年7月7日「教育行財政研究と国際教育開発」開催予定

≪セミナー開催の目的≫
本セミナーの目的は、教育行財政の分野で世界的に活躍している世界銀行の野村真作博士や荘所真理博士等を招聘して、セミナーを開き若手研究者の育成を行う。本研究科が実施している国際協力機構の課題別研修「テーマ:教育行財政」に参加している30名の開発途上国の担当官が本セミナーにも参加する。教育政策策定者としての専門的見地から助言が為されることが期待され今後の研究の向上につなげることも本セミナーの目的である。

2014年10月31日「国際教育開発フォーラム:途上国における教育行財政研究」開催予定

≪セミナー開催の目的≫
本セミナーにおいては、神戸大学の他、ソウル国立大学、東京大学、早稲田大学、名古屋大学、大阪大学、広島大学の教員、若手研究者(院生含む)が一同に参集し、国際教育開発の最新の潮流について研究発表を実施することを目的にしている。特に、今回は本事業の主テーマである「途上国における教育行財政」に特化した特別セミナーを設け、多様な国における最新の状況を共有する予定である。当該セミナーを通じて関連議論を促し、参加者の当該課題に対する理解を深めることを目的とする。

2014年12月8日‐10日「開発途上国における教育行財政研究と公共政策」開催予定

≪セミナー開催の目的≫
本セミナーの目的は、今年度の研究成果を共有することにある。また、本プロジェクトに参加している対象国の拠点機関の代表者が神戸に集まることにより、今後の交流目的、目標を明確にする。 本研究科が実施している国際協力機構の課題別研修「テーマ:教育行財政」に参加している開発途上国の役人に本セミナーに参加してもらい、教育政策策定者からも批判的なコメントをもらい、今後の研究の向上につなげることも本セミナーの目的である。本セミナーを3日間行い、他の2日間は本プロジェクトの打ち合わせと研究会を行う。

共同研究計画(共同研究、セミナー以外の交流)
所属・職名
派遣者名
派遣・受入先
(国・都市・機関)
派遣時期 用務・目的等
神戸大学・教授
小川啓一
韓国・ソウル
(ソウル国立大学)
平成26年5月 本事業の実施計画の協議を行う。
ソウル国立大学の若手研修者を対象に教育行財政に関する研究指導を行う。
神戸大学・教授
小川啓一
ウガンダ・カンパラ
(マケレレ大学)
平成26年5月 本事業の実施計画の協議を行う。
マケレレ大学の若手研修者を対象に教育行財政に関する研究指導を行う。
大阪大学・助教
川口 純
タイ・チェンマイ
(チェンマイ大学)
平成26年8月 本事業の実施計画の協議を行う。
チエンマイ大学の若手研修者を対象に教育行財政に関する研究指導を行う。

神戸大学・教授
小川啓一
ラオス・ビエンチャン 平成26年9月 本事業の実施計画の協議を行う。
チャンパサック大学の若手研究者を対象に教育行財政に関する研究指導を行う。